2018.01.31TOPICS

“街の足”から“旅する乗り物”へ 地元愛が詰まった西鉄の新型観光列車とは?

2019年春、西日本鉄道から地域を味わう旅列車「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」がデビューします。約100年間に渡る西鉄の歴史の中で、車内で食事ができる列車の運行は今回が初めてです。

福岡(天神)から、二日市、久留米、柳川などを経由し、大牟田が終着駅となる74.8kmの西鉄天神大牟田線。通常は通勤や通学で利用いただいている “日常の風景”の中を、観光列車が走ります。コンセプトは「LOCAL to TRAIN ~街を繋いできたレールは人をつなぐ時代へ~」。観光で訪れる方はもちろん、通勤や通学で利用されている地元のみなさまにも、福岡・筑後のの新たな魅力を感じていただける列車を目指しています。

今回は、「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の魅力について、観光列車のプロデュースを担う株式会社トランジットジェネラルオフィスの甲斐さんと、西鉄の事業創造本部観光事業部課長として企画を担う吉中がお話しします。

トランジットジェネラルオフィス プロデューサー
甲斐政博さん
トランジットジェネラルオフィスにて、アパレルや車メーカーなどブランドのカフェやレストラン、商業施設、オフィス、住宅などのプロデュースを手掛ける。(http://www.transit-web.com/) 東京に住みながらも、すっかり福岡ツウになりつつある。宮崎県出身の九州男児。

西日本鉄道㈱事業創造本部観光事業部課長
吉中美保子
もともとは沿線のまちづくりに取り組んでいたが、あまおうプレミアムスパークリングワインの開発や、沿線アンテナショップ「西鉄縁線駅みやげ」の企画など、ここ数年は、沿線の生産者や加工者と消費者をつなぐ企画を多数手がける。その発想は、観光列車プロジェクトにもそのまま活かされている。

 

プロジェクトの始まりは西鉄流のおもてなしから
大牟田線の車窓に観光のヒントあり!?

西鉄筑紫駅の先にある車両基地の列車の車内。いつもはお客さまで活気づいている車内も今日は貸切状態。ロングシートに腰掛けて、旅行気分での対談です。

―今回トランジットジェネラルオフィスさんと一緒に仕事をすることになったきっかけは?

吉中 観光列車で地域の活性化をするためには、ブランディングが大切だと思ったので、まず、全体プロデュースをしてくださる方を探しました。

甲斐 電車をプロデュースする機会は、なかなかあるものではないので、観光列車のプロポーザルに参加しないかと声をかけていただいた時は、断る理由がありませんでした。実家が九州で、西鉄のことも良く知っていましたし。

吉中 トランジットジェネラルオフィスさんは観光列車を手がけられた実績もあるし、九州内外のクリエイターの方ともつながっていらっしゃいます。デザインから実際の電車を作り上げるまでのノウハウを持っていらっしゃる点が、プロポーザルの決め手でした。一緒にお仕事をするようになって感じたのは、甲斐さんは九州のご出身なので、都会の感覚とローカルの感覚どちらも持ち合わせていらっしゃるということ。甲斐さんにとって、九州の仕事はどうですか?

甲斐 ありがとうございます。僕らにとって九州はいろいろな可能性を持つ場所。九州の仕事は、これからも積極的に行っていきたいですね。

―甲斐さん、最初に福岡に来た時の印象はいかがでしたか?

甲斐 最初、吉中さんが西鉄沿線の面白いスポットを案内してくださったのが思い出に残っています。ちょっとした旅に出かけた感じでした。

吉中 そうでしたね。最初は大牟田に行きましたね。

甲斐 大牟田で、有名な草木饅頭を買いに行ったら、帰りの電車時間ギリギリになってしまい、焦って階段を走りましたね(笑)。天神大牟田線は、住宅の中を走っているので、「街の足」として日常に馴染んでいる電車だというのが第一印象です。東京にも住宅街を走る電車はあるのですが、天神大牟田線から見える素敵な景色は、東京とはまた違っていました。特に、川を渡ると景色がガラッと変わってきますよね。

吉中 筑後川ですね。橋を渡るところで、音が変わる。

甲斐 まさに。今回の観光列車の仕事を前に、地元の方にインタビューをした時に、その景色が象徴的だよという話を伺っていて。やはり、実際に見たときは印象深かったです。

吉中 西鉄沿線のいいところって、「都会の良さ」と「田舎の良さ」の両方があるところだと思っています。天神へ通勤通学するにも便利ですし、天神を離れると田園風景とかこだわりのお店とか、いろんな場所がある。一つ一つは小さくて、洗練されていない面があるかもしれないけれども、そういうものが集まると、一つの特徴的な流れみたいなものになると思うんです。

甲斐 その時の体験は、今回の観光列車にも生かされていると思います。「街の足」から、いかに観光列車としての魅力をつけていくか、という発想がこのプロジェクトのはじまりだったように思います。

新しい仕掛けが盛りだくさん!
「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の見どころとは?

―「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の魅力とは?

吉中 地域資源を列車にたくさん積み込んでいる点です。列車の内装として、天井には、八女の竹を使った「竹編み生地」を、壁や床の一部には久留米の城島瓦を使用しています。家具は大川で家具職人さんに作っていただいたり、線路に使っている石をタイルにして使ってたりもしています。また、壁に使っている「TINパネル(ぶりきのパネル)」に浮き出ている模様は鹿児島睦(かごしままこと)さんという福岡出身のアーティストの方が筑後川をイメージして描いてくださった図案なんですよ。

甲斐 内装デザインは、プロポーザルの段階から、東京にある設計会社「ランドスケーププロダクツ」にお声がけしていました。代表の中原さんは鹿児島県出身で、九州のいろんなクリエイターともつながっている方で、今回のプロジェクトには適任だと思いました。外装やグラフィック、ロゴのデザインは、グラフィックデザイナーの福岡南央子さんに依頼しました。とても洗練されていながら、フレンドリーな雰囲気のあるデザインが魅力です。
食事も、沿線の野菜や果物など地元の食材をを生かした料理を計画しており、そのメニュー監修は、食材の魅力を十分に引き出して頂ける、とても実力のある方にお願いする予定です。詳しいお話ができるのはもう少し先になりますが、とても素敵な料理を準備しています。

―九州以外の方も多く関わっていらっしゃるんですね?

甲斐 そうですね。西鉄さんは、地元で安全を守りながら、人々の足として親しまれていますよね。沿線にはいろんな資源がありますから、僕らの役割は、その魅力を引き出しながら、新しいエッセンスを加えることで、更に魅力的なモノに仕上げて行くことだと思っています。東京を中心に、全国でいろんな空間やブランド作りをしている経験を生かして、西鉄さんの新しい魅力を全国に発信したいと考えています。

吉中 今回、関わってくださっているクリエイターの皆さまは、私たちだけでは全く思いもつかないような方々ばかり。日本全国で仕事をされているトランジットさんならではの顔ぶれだと思います。地域の資源をより魅力的にしていくためには、やっぱり、外の方の視点も大事だと思うんです。

甲斐 今回の車両デザインは、何度も議論を重ねて、デザインを詰めました。街なかで観光列車を見かけた時に「今日はラッキー」と思わず笑顔になるような、そんな親しみやすいデザインになったと思っています。今後、お披露目され、どんな反応が返ってくるか楽しみです。

地元の人にも、世界中の人にも楽しめる
“旅する乗り物”を発信して行きたい

―お客さまにはどのように楽しんでいただきたいですか?

甲斐 沿線に住んでいる方にももちろん楽しんでもらいたいのですが、九州だけではなく、日本中はもちろんのこと、世界中の方々にも楽しんでいただける列車にしたいです。車内で完結するのではなく、電車を降りて沿線を巡る楽しみもしっかりと発信したいと思います。電車って、やっぱり“旅をする乗り物”だと思うので。

吉中 通勤電車として親しまれている存在だからこそ、観光列車というスタイルで、食事をしながらゆっくり走ってみると、新鮮でいつもと違う発見ができるのではないでしょうか。九州内外で愛される列車を目指したいです。そのためには、今回のコンセプト「LOCAL to TRAIN~街を繋いできたレールは人をつなぐ時代へ~」の通り、これから自治体や沿線地域など、いろんな人々とつながっていかなければならない。「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」が、そうしたつながりのきっかけになっていくといいなと思っています。

「列車も料理も素敵なものに仕上がってきましたが、ここからが更に大事です。西鉄とトランジットジェネラルオフィス、そして沿線のみなさんが協力して情報を発信することがとても重要です。まさにこれからが正念場ですね」と、何度も情報発信の重要さを強調されていた甲斐さん。車両デザインはもちろんのこと、食事やサービスなど、電車にかける思いは熱く話はつきません。関わってくださったみなさまの思いがつまった「THE RAIL KITCHEN CHIKUGO」の予約開始は2018年秋、運行開始は2019年春の予定です。徐々に全貌をご紹介していきますので、どうぞお楽しみに。

(取材/撮影 編集部)